2023.08.10社会との共存共栄
SDGsで使われるワード_3 「ユニバーサルデザイン」「ダイバーシティ」
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を取った言葉です。
言葉の意味を正しく理解することもSDGsの活動の1つだと考え、よく使われる言葉を少し紹介させていただきます。
第3弾となる今回も、なんとなく意味は分かるが、明確には…というワードを中心に解説していきます。
ユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインという考え方は、アメリカの大学で建築などの研究をしていたロナルド・メイス教授が「できるだけ多くの人が使いやすいデザインをはじめから考えることが必要」と考え1980年代に広めたものです。
直訳すると、
Universal=一般的な、例外なくあてはまる、全員の
Design=デザイン、設計、様式、図柄
となり、全ての人用のデザインとなり、みんなに優しいデザインという意味でつかわれます。
*頭文字をとってUDと表記されることもあります。
バリアフリーはバリア(障壁)を取り除き障害によりもたらされる障壁をなくすという考え方ですが、ユニバーサルデザインは最初から障害の有無に関わらず多様な人が使いやすいようにデザインする考え方です。
また、ユニバーサルデザインという考え方は、建築物や商品など、形があるものだけではなく、文字(UDフォント)や色(カラーUD)、仕組み、サービスなど、様々なものに取り入れられています。
Adobe が提供するデザイナー向け色彩ツールAdobe Colorでは「多様な色覚対応」ツールが追加され、どのような色に見えるか色覚シミュレーターで確認できるサービスがあります。
*色のユニバーサルデザインについては下記ご参照ください。
身の回りにあるユニバーサルデザイン
【ピクトグラム】
普段の生活で一番良く見るユニバーサルデザインは、ピクトグラム(情報や注意を示すために表示される案内記号)ではないでしょうか。東京オリンピックのパフォーマンスで「ピクトグラム」という言葉を知った人も多いと思います。男性と女性の人型ならトイレ、Pの文字は駐車場、電車のマークは駅、フォークとナイフで食事エリアなど、一目で何を意味しているのか分かるマークです。文字や言葉がわからなくてもピクトグラムを見ると意味を理解しやすくなるので、案内標識や案内地図などで多く使用されています。
【電車やバスの乗降】
車両とホームの段差や隙間を小さくした電車やノンステップバスも、ユニバーサルデザインを意識した結果です。乗り降りの際に、段差や隙間が小さいことで、車いすやベビーカーが楽に乗降できるだけでなく、体の不自由な方や小さなお子様も安全に乗り降りできます。通常の乗降に支障がない方でも、ホームとの段差や隙間が狭い電車が来たら、気分的に楽に乗り降りができるのではないでしょうか。
【両用の文具やキッチン雑貨】
右利きも左利きも使えるハサミやお玉はユニバーサルデザインです。右利きの人が多い日本では、様々なものが右利き用に設計されています。そして、左利きの人は、そのような環境下での生活は使いにくいものが多くストレスになります。そこで、「みんなに優しいデザイン」ということで、左右どちらでも切れるハサミや、どちらからでも注げるお玉など、右利きや左利きでも使えるユニバーサルデザインを意識した製品が設計されています。
7つの原則
ノースカロライナ州立大学ではユニバーサルデザインを設計するうえで意識すべき点を、次の7つの原則としてまとめています。
必ずしも、これらの原則を全てカバーする必要があるわけではなく、これらの原則を意識しようというものです。
Equitable use (公平な利用) |
誰もが公平に使える |
Flexibility in use (使用上の柔軟性) |
使用状況にあわせて使いやすい形で使用できる 使い方が簡単で自明であること。 |
Simple and intuitive (単純で直感的) |
言語知識や経験がなくても直感的に簡単に使える |
Perceptible information (知覚できる情報) |
必要な情報がすぐにわかること 簡単なミスが危険につながらないこと。 |
Tolerance for error (ミスの許容範囲) |
使用時に少しのことが危険につながらないこと 身体への過度な負担を必要としないこと。 |
Low physical effort (身体的努力が低い) |
体力のない人でも簡単に使用できること 利用のための十分な大きさと空間が確保されていること。 |
Size and space for approach and use (接近や使用のためのサイズと空間) |
誰もが支障なく自由にアクセスできるように広さや空間が確保されている |
SDGs 17の目標 ユニバーサルデザインは次の目標に関係します。
4.質の高い教育をみんなに
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
ダイバーシティ
英語のdiversityは直訳すると、「多様性、雑多」という意味になります。
ダイバーシティは、もともとは、アメリカ国内の人権問題や雇用の機会均等を求める運動の中で広がった考え方で、年齢や性別、人種、宗教、価値観、障害など様々な属性を持った人が集まった状態を意味します。
また、外見で判断しやすい表層的ダイバーシティと外見では判断しにくい深層的ダイバーシティに分類されることもあります。
ダイバーシティ経営(ダイバーシティーマネージメント)
経済産業省ではダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義しています。
つまり、ダイバーシティ経営とは、多様な人材それぞれの持つ潜在的な能力や特性を活かし、生き生きと働くことのできる環境を整えることによって、自由な発想が生まれ、生産性を向上し、自社の競争力強化につながる、といった一連の流れを生み出しうる経営のことです。
経済産業省 ダイバーシティ経営の推進
そして、このような経営は、少子高齢化の中で人材を確保し、多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高め、持続的成長するためには不可欠と言われています。
ダイバーシティ&インクルージョン
インクルージョン(inclusion)は「含めること、一体性」という意味です。ここでは、多種多様で異なる人々がお互いの考え方や違いを受け入れるという意味になります。
単にダイバーシティ(いろいろな人が集まっている)だけではなくインクルージョン(一体になり共存共栄する)するという考え方です。
ビジネスでは、多種多様な人材が受け入れられて集まり、全ての従業員が尊重し、能力を十分に発揮している状態を示します。
つまり、ダイバーシティは多様な違いが受容されている状態、インクルージョンは違いが尊重され個々が活躍できる状態となります。
ニューロダイバーシティ
Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)という2つの言葉が組み合わされた言葉です。「経済産業省 ニューロダイバーシティの推進について」のサイトで「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方と記載されています。自閉症スペクトラム症や注意欠如・多動症、学習障害といった発達障害において起こる行動や現象を、能力の欠如や優劣ではなく、「人間のゲノムの自然で正常な変異」として捉える概念です。
発達障害などがある場合でも、一定の配慮や支援があれば、その特性を活かして戦力になることができます。このニューロダイバーシティへの取組みは、社会の成長戦略として近年関心が高まっています。
SDGs 17の目標 ダイバーシティは次の目標に関係します。
目標5「ジェンダーの平等を実現しよう」
目標10「人や国の不平等をなくそう」
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
開発チーム 加藤