2024.02.14社会との共存共栄
SDGsで使われるワード_5 「ディーセント・ワーク」「サプライチェーンとバリューチェーン」
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を取った言葉です。
言葉の意味を正しく理解することもSDGsの活動の1つだと考え、よく使われる言葉を少し紹介させていただきます。
第5弾となる今回も、なんとなく意味は分かるが、明確には…といワードを中心に解説していきます。
ディーセント・ワーク
ディーセント・ワークは、Decent=ちゃんとした Work=仕事 となり”働きがいのある人間らしい仕事“と訳されます。より具体的には、 自由、公平、安全と人間としての尊厳を条件とした、 全ての人のための生産的な仕事のことです。
1999年の第87回ILO総会に提出された事務局長報告において初めて用いられ、ILOの活動の主目標と位置付けられました。
ディーセント・ワーク実現のための4つの戦略目標が掲げられています。ジェンダー平等は、この4つの目標に横断的に関わっています。
国際労働機関ILO ILO駐日事務所 ディーセント・ワークとは
https://www.ilo.org/tokyo/about-ilo/decent-work/
- 1. 仕事の創出 必要な技能を身につけ、働いて生計が立てられるように、国や企業が仕事を作り出すことを支援
- 2. 社会的保護の拡充 安全で健康的に働ける職場を確保し、生産性も向上するような環境の整備。社会保障の充実
- 3. 社会対話の推進 職場での問題や紛争を平和的に解決できるように、政・労・使の話し合いの促進
- 4. 仕事における権利の保障 不利な立場に置かれて働く人々をなくすため、労働者の権利の保障、尊重
世界では不平等な扱いや不公平な処遇により劣悪な環境で労働を強いられている人がたくさんいます。日本でも正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差や、長時間労働問題、社内でのハラスメント、昇進や昇給の男女格差など、様々な問題があります。
ディーセント・ワークの推進により賃金の引き上げや社会保障の充実、労働環境下での男女平等、安全な環境での労働などが実現すれば、個々人がより働きがいのある人間らしい仕事ができ、それにより経済成長も可能になります。
日本でもディーセント・ワークを推進するために、厚生労働省ではディーセント・ワークの4項目をこのようにまとめています。
- 1. 働く機会があり、持続可能な生計に足る収入が得られること
- 2. 労働三権などの働く上での権利が確保され、職場で発言が行いやすく、それが認められること
- 3. 家庭生活と職業生活が両立でき、安全な職場環境や雇用保険、医療・年金制度などのセーフティネットが確保され、自己の鍛錬もできること
- 4. 公正な扱い、男女平等な扱いを受けること
また、厚生労働省は「7つの評価軸」として、企業として取り組まなければいけない対応を示しています。
1.WLB(ワークライフバランス)軸 | 仕事とプライベートのバランスを保ち年齢を重ねても働き続けられる職場であるかを評価 |
2.公正平等軸 | 性別や雇用形態、年齢に関係なく全ての労働者が公正かつ平等に活躍できる職場であるかを評価 |
3.自己鍛錬軸 | スキルアップを目指す全ての労働者が自分のスキルを磨く勉強や機会が与えられる職場であるかを評価 |
4.収入軸 | 正規・非正規にかかわらず人間らしく生活するための収入を継続的かつ安定的に得られる職場であるかを評価 |
5.労働者の権利軸 | 労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)が確保されていて、労働者の発言が受け入れられやすい職場であるかを評価 |
6.安全衛生軸 | 働くうえで身体的精神的に安全な環境が整備されている職場であるかを評価 |
7.セーフティネット軸 | 雇用保険や医療・年金制度の最低限以上の公的な制度に加入している職場であるかを評価 |
現在の日本では、国によるディーセント・ワークの推進により労働環境が見直され、以前では当たり前であったことが今では当たり前ではないことや違法なことになっています。日本の労働環境は確実に変わってきていますが、まだ十分に良くなったとは言い難い状況です。しかし、この変化を止めずに社会全体でディーセント・ワークトワークの推進してき労働者がより働きやすい環境が整えば、SDGs目標8「働きがいも経済成長も」が実現が見えてくるでしょう。
サプライチェーンとバリューチェーン
サプライチェーン(Supply Chain)=「供給の連鎖」で、原材料の調達から生産、加工、流通、そして販売により消費者に提供されるまでの一連の流れ指すものです。
バリューチェーン(Value Chain)=「価値の連鎖」で、サプライチェーンの活動とそれらを支える開発や労務管理など、全ての活動を価値の連鎖と捉える考え方です。アメリカの経済学者マイケル・ポーター氏が提唱した考え方です。
サプライチェーンもバリューチェーンも原材料調達から販売による消費者への提供までを対象としますが、サプライチェーンは商品やサービスがどのように供給されているかに焦点を当て、バリューチェーンはどの段階でどのような価値が創造されているかに焦点を当てます。
SDGs(目標12.つくる責任、つかう責任)とサプライチェーンとバリューチェーンの関係はCSR(企業の社会的責任)が重要になってきていることにあります。
CSRでは「企業は自社の利益のみを考えるのではなく、環境や社会全体を考え共存しながら成長する」ということを重視しています。
例えば、1つの商品を作るのに、原材料の調達から研究開発、製造、物流、販売と様々な工程を経て消費者の元に届きます。これら全ての活動が必ずしも1つの企業内で完結するのではなく、多くの取引先企業が関わり行われます。またこのような企業活動が各企業で行われることで1つの商品を作るだけで社会や環境にまで様々なことに影響を及ぼします。CSRではこれら影響する全てに対して考慮することを求めています。
つまりSDGs(目標12.つくる責任、つかう責任)の達成において、企業は自らの活動範囲だけではなく、サプライチェーンとバリューチェーンにも着目し全体で社会や環境にどのような影響をもたらすかを把握し、SDGsと照らし合わせながら対応していく必要があるのです。