こんにちは。東京営業の柴田です。
私たち業界特有の用語の意味について解説する「販促用語集」のVol.9です。
今回は、第9回目ということで、印刷のやり取りの際に使用する「苦しい時に役に立つ」用語をご説明いたします。是非、防ぐ方法もセットで覚えてください。
【ピンホール】
・印刷物に、針で突いたような小さな白い点が発生してしまうこと。
例)・このデザインはベタの面積が多いから、ピンホールがおきないように2度刷りしてください。
→このデザインは、広範囲に同じ色を均一にするデザインなので、印刷の不良で、白い点のような
インクが印刷されていない部分が発生しないように、同じ色を2回印刷して防いでください。
(解説)
前回(Vol.8)で解説した通り、印刷はごく小さな点の集合でできているのですが、印刷する紙本体や、印刷する為のインクの通り道に、紙の粉や、埃などが付着してしまい、正常な印刷ができない場合に発生します。
特に、広範囲に同じ色を均一に印刷するデザインなどで発生した場合には、白い点が目立ってしまいます。
一般的に、防ぐ方法としまして、そのようなデザインの場合には同じ色を2回印刷することで、万が一1回目の印刷でピンホールが発生したとしても、その上に本来印刷する同じ色を重ねるという方法が多くの場合とられています。
【ブロッキング】
・印刷時のインクの乾燥不良などで、印刷物と印刷物がくっついてしまう現象のことです。
例)・リッチブラックのデータが200%を超えてしまっていて、ブロッキングする可能性が高いのでデータを調整しましょう。
→黒の印刷部分を、より黒々しくするために、黒100%以外に、他のインクを同時に印刷する割合が、規定値の200%を超えてしまっているので、印刷時にインクが乾かない状態で積み重なってしまうと、印刷物同士がくっついて、使用できなくなってしまうので、印刷前にデータを調整しましょう。
(解説)
印刷は、用紙の上にインクを載せて行いますが、印刷の湿度管理や、用紙とインクとの相性などでインクが完全に乾かない状態で、印刷物が積み重なってしまう状況が発生する場合があります。この場合、インクが接着剤のように用紙同士をくっつけてしまいます。そうなると、その印刷物は不良になってしまいます。色味を濃くしたいからと、基準以上にインク濃度を上げないように調整が必要なのです。
【ゴースト】
・本来設定していないはずのぼやーっとした濃淡が印刷物に、勝手に発生してしまう現象のこと。
例)・今回の印刷物、ゴーストがでちゃってますね・・・。
→今回の印刷物の色味や仕上がりを確認したところ、想定していない印刷のムラがでてしまっていますね…。
(解説)
・本来、絵柄にいる(ある)はずのない濃淡が印刷されてしまっている・・・。
このように、まるで幽霊が現れたような現象が「ゴースト」と呼ばれています。これも印刷不良になります。
デザイン的に発生しやすいパターンのひとつに、広範囲のベタの中に、印刷の無い白枠のデザインがあるパターンがあります。デザイナーの方は意識して設定する必要は無いのですが、印刷会社の工夫としてこのような場合には、デザインされた外側の部分に同じベタの色を配置する「捨てベタ」というテクニックが存在します。
【版ズレ】
・本来印刷される為の位置からインクがずれてしまい、紙の字の色が見えてしまったり、色がはみ出ているように印刷されてしまう現象のことです。
例)・このカタログのタイトルの文字、版ズレしてますねぇ。
→このカタログのタイトルの文字、印刷時に色を重ねる部分にズレが発生してしまっていて、
本来必要のない色がはみ出てしまってますねぇ
(※印刷のズレで、紙の地色の白がでてしまっていますねというケースもあります)
(解説)
「見当(けんとう)ずれ」とも言います。前回解説したように、色を再現するために、CMYKの4色が使われておりますが、その中の特定の色だけが均一にズレてしまっている状態です。
白地が見えないようにする、予防のテクニックとしては、色と色との境界を若干重ね合わせることで、印刷時のズレが起こったとしてもどちらかの色でカバーするといったものがあります。
【先祖返り】
・修正したはずの箇所が、いつの間にか修正する前の状態に戻ってしまっている現象のことです。
例)・このポスターに使われているイラスト画像、先祖返りしているなぁ
→修正1回目に直したはずの部分が、別の部分を修正した修正2回目の際に、元に戻ってしまっているなぁ
(解説)
デザインを仕上げていくなかで、複数回の修正が発生します。そのような、修正作業の中で、一度修正したはずの部分が、別の箇所を修正している作業の間に、いつのまにか修正前に戻ってしまっている・・・、そのようなトラブルを先祖返りと言います。修正を依頼して、その修正が仕上がってきた際には、その部分だけに注目してしまいがちですが、最終的なデザイン完成時には、修正の経緯も含めてすべてチェックする必要があります。
最後に
今回は、どちらかというとトラブル発生時に耳にする用語になったかと思います。
一方で、お客様やデザイナー、印刷現場の方などからこのような用語を耳にした際に「知らない」ことでトラブルや、トラブルに発生する火種となっていることに気づけないことにもつながります。
そして、それぞれのトラブルに対して先人達の創意工夫で、予防する方法や、同じミスを生み出さない方法が編み出されているのも事実です。皆様も、今後さまざまな仕事を経験していく中で思わぬトラブルに出会うこともあるかと思います。しかし、そのような場合にも成長するチャンスと受け取ることができれば、次につながるかと思います。
安易に、今回は運がなかったというような受け取り方をせず、逆境をバネに新たなチャレンジへとつなげていきたいという気持ちで取り組んでいきたいところです。