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2022.01.13ものづくり

紙を折った際の反発について

紙の反発について

こんにちは。大阪紙器設計の原です。
今回は折り紙を作る際に起こってしまう紙の反発とそれらの解決策についてお話しさせて頂きます。
紙の反発は紙器設計でも極めて神経を使う問題でもありますので、その事についてもご説明を致します。

折り紙での紙の反発とは

基本的に紙という素材は、折ると必ず元に戻ろうとする力が発生します。コピー用紙のような薄い紙では余り目立ちませんが厚い紙になればなる程その力は顕著になります。
折り紙は薄い紙でする事が多いので作り始めはあまり気にならないのですが、非常に複雑な作品の場合折りを重ねていくにつれ紙の反発がどんどん増えていき、折るという行為が困難になっていきます。最終的にはただ折っただけでは形が決まらず、折る前の姿に戻ろうとしてしまいます。
この問題は、薄い紙よりも更に薄い紙を用いる事で解決する事も出来ますが、どれほど薄い紙でも紙の反発そのものを無くす事は出来ません。
また薄すぎる紙はどうしても作品が華奢になってしまい、自身の目指している作品の雰囲気にそぐわない時もあります。

反発を軽減する方法

これらの紙の反発を軽減する方法は幾つかあります。

 1 糊や接着剤で紙の位置を固定する方法

 2 紙の内側にアルミホイルを仕込み形がピシッと決まるようにする方法

 3 トンカチやペンチ等の強い力で紙を折る方法

何れの方法も一長一短があり、作者によって好みが分かれる所だと思われます。
ただ、私が好んで用いるのは「ウエットフォールディング」という方法です。

ウエットフォールディングとは?

ウエットフォールディングとは、紙を水で適度に湿らせて柔らかくする事で紙の反発を軽減する技法の事です。多少厚い紙でも柔らかくすれば容易に折る事が出来ます。
何より、折られた後に紙が乾くとその状態でピシッと形状を維持してくれる為、仕上げ作業がグッと楽になります。
また、通常の折り作業では困難な曲線的な表現を紙に与える事が出来ます。言葉では良く分からないと思いますので実際の加工例をご覧ください。

左はウエットフォールディングを用いずに正方形の紙に曲線を施したもの。右はウエットフォールディングを施した物になります。
紙に対しての折り罫線は左右共に同じなのですが、全く異なる仕上がりになっています。
左側は曲線の折りに対して紙の反発が強いため、これ以上深く折る事が出来ません。
一方で右側は曲線の折りに紙全体が滑らかに沿うように形作られています。
これはウエットフォールディングによって、紙の反発を極力減らしたからこそ出来る表現になります

では、実際にウエットフォールディングを作品に用いるとどうなるのでしょうか?
私が創作した「飛ぶクワガタムシ」を例としてお見せ致します。
顎、3対の足、1対の前羽と後ろ羽、これらを全てをハサミを使わずに折りだすと、どれだけ薄い紙であっても紙の反発を無視することが出来なくなります。
しかしウエットフォールディングを施したことで紙の反発を極力抑え、虫らしいシャープなフォルムを表現する事が出来ました。

クワガタムシと一口に言っても様々な種類がいますが、この作品は特定の種を再現した物ではなく、「クワガタムシ」という生き物を大きな括りで見立てた作品になります。今までにご紹介した作品の中では最も複雑な物であり、製作時間は6時間程掛かっています(練習も含めればさらに2倍~3倍掛かっています)

ウエットフォールディングの注意点

非常に便利なウェットフォールディングですが、気を付ける事も多くあります。
まず紙を水で濡らし過ぎると紙がグズグズになってしまい破れてしまいます。また紙によって水の浸透具合が異なる為、適切な湿らせ具合を見定める必要があります。
なにより注意すべき事は、「ウエットフォールディングは数ある手段の一つに過ぎない」という事です。
作品によってはウエットフォールディングを使わず、糊や接着剤を用いた方が良い事もあると思います。
私が上記に挙げた方法以外にも紙の反発を軽減する方法があるかもしれませんし、最初から紙の反発が起こりづらい構造や展開を考えるのも重要なアプローチです。

まとめ

紙器設計士にとっても紙の反発は常に付きまとう問題です。紙器什器を折り紙のように水で湿らせるわけにはいきませんので、爪を引っ掛けたり両面テープで固定する事が多いです。
しかし、使用する紙の厚みや紙に掛かる負荷によって紙の反発は異なってきます。そういった細かな事柄を軽視すると、紙の反発に負けて固定していた面が弾けてしまう事もあります。
当然ながらこの現象は設計士のミスであり、お客様の信頼を大きく損なってしまいます。
それらを防止するには、紙器設計士としての技術を高めるのは勿論の事。爪や両面テープでの固定は手段の一つに過ぎない事を留めて置く必要があります。
プラスチック製のネジを用いたり「爪+両面テープ」のような合わせ技も効果的です。場合によっては紙器什器の構造を一から見直す必要もあるかもしれません。
折り紙も紙器設計も重要な点は、製作物に対して最も効果的な手段を用いる事であり、その手段の一つ一つに精通している事がプロフェッショナルの条件だと私は考えております。


投稿者

原

企画開発部 西日本設計チーム

西日本設計チーム係長
特技は折り紙。好きな言葉は「枯れた技術の水平思考」

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