2022.03.15ものづくり
私が折り紙を創作する際の思考~前半~
折り紙の創作思考について
こんにちは。大阪紙器設計の原です。
今回は、折り紙を創作する際の考え方や方法についてお話しさせて頂きます。内容は折り紙に沿った物になりますが、考え方そのものは様々な創作活動に通ずる所があると思います。
どのように創作をしていくのか?
1 創作する題材を決める
「当たり前の事では?」と思われるかもしれませんが、私はかなり大切なポイントだと感じています。好きこそ物の上手なれという言葉があるように、自身が時間を掛けて追及できる創作題材の選択は後々の工程に於いてもモチベーションの獲得に非常に重要です。自分が作りたいものを纏めてリストアップしておくのも有効です。
2 意匠を考える
作りたいものが決まったら、次にどのような意匠にするかを考えていきます。
まず初めに、他の人達が同じ題材でどんな作品を作っているのかを調べます。
これには2つの理由があります。
1つ目は、他者の作品を見る事でインスピレーションを受けたり、新しい発見や学びに繋がる為。2つ目は、他者の作品を知らずに、たまたま全く同じ表現を行ってしまうと著作権の侵害に繋がる恐れがあるからです。
また、折り紙作品を調べるのと同時に、絵画・イラスト・写真や動画(現実に存在するものなら実物も見る)・様々な立体作品物も調べていきます。折り紙とは異なるカテゴリーから、思わぬ発想に遭遇する事もありますので、様々な範疇から情報を得る事は非常に大切です。
そこから、具体的に作品の意匠を頭の中で考えていきます。複雑にするか、シンプルにするか、可愛くするか、スタイリッシュにするか…。作品の見た目を決める重要な工程ではあるのですが、敢えて私は考えすぎないようにしています。人によって、このあたりのアプローチは異なると思うのですが、私の場合頭の中で色々考えるよりも、実際に手を動かして紙を折る時間を増やした方が創作がスムーズに行く事が多かった為です。
3 試作品を作る~完成へ
次に試作の為、実際に紙を折っていきます。この時は市販の折り紙用紙を使う事が多いです
これは最も時間が掛かる工程であり、何十回と作り直す時もあります。複雑な物では、試作作業に数週間かかる事も珍しくありません。作っていくうちに考えが変わり「2」の工程に戻る事もよくあります。
時々、周りの人から「頭の中で計算をして折ってるの?」と聞かれる事があるのですが、私は折り紙を折る時に計算をした事は一度もございません。
計算式を用いて折り紙を折っている方もいらっしゃるのですが(1:(√3+1)/2≒1.37…等)私はそういった事が不得意な為、全て感覚で折っています。最も大変で苦しい工程ですが、試作に試作を重ねていく事により確実に完成に近づく工程でもありますので、諦めずに粘り強く行う事が大切です。
作品が完成が見えてきたら、作品に使用する紙の質感・色合い・大きさ等も考えていきます。
最後に作品用の紙を折り上げて完成です。
まとめ
上記の創作方法は紙器設計にも通ずる所があります。
当然ながらお客様からのご要望を優先する必要がある為、1の「創作する題材を決める」のは中々難しいのですが、2と3に関しましては紙器設計でも同様の事を行います。
提案物の製作の際には、店頭で他社の紙什器の事例をリサーチするだけでなく、平面グラフィックの作品や書籍類を調べる事で見識を広げておくこと事も重要です。その上で試作品を作り、より良い形状・見せ方に近づける為に何度も試行錯誤を繰り返してブラッシュアップを行い完成度を高めます。
一方で、紙器設計とは違う点も明確にあります。それは時間(納期)を必ず守らなくてはならないという点です。
折り紙は個人の趣味で自由に時間を使える上、納期という概念は存在しません。しかし、紙器設計には明確な納期が存在しており、必ずお客様のご希望にかなう物を提出しなくてはなりません。
創作活動と行う手段が似通っていても、通ずる点と異なる点をしっかりと認識する事が非常に重要で、プロフェッショナルであるために自分の中でけじめをつけるようにしています。
次回は、「私が折り紙を創作する際の思考~後半~」と称しまして、上記の流れを踏襲した実際の創作例をお見せ致します。
来月も是非ご覧ください。