2022.07.12ものづくり
折り紙での立体作品と平面作品について
折り紙で作る立体と平面
こんにちは。大阪紙器設計の原です。
今回は折り紙で行える立体的な作品と平面的な作品の2つをご紹介致します。
どちらも、それぞれに優れた点や難しい点がありますので、上手く使い分ける事が大切になります。
(※今回ご説明する内容は私が個人的に定義した物になります。折り紙界全体で定義されているものではない事を予め何卒ご了承ください)
折り紙での平面的な作品
まず、折り紙での平面作的な作品をご説明します。
今回ここでご説明させていただく平面的な作品というのは、
「1つの視点からしか鑑賞できない作品」を指します。
伝承作品に例えると「蝉」がそれにあたります。昆虫の蝉は本来は立体的な対象なのですが、
この作品は1面にぺったりとしています。正面から見ると作品として成り立っているのですが真横から見ても単なる紙の重なりにしか見えません。
これは対象を正確に表現出来ていないという事では無く、以前の記事でもご紹介した、
折り紙特有の「見立て」という表現を最大限に生かした作品になります。
折り紙での平面作品はシンプルな物が多く折工程も簡単なのですが、シンプルであるが故に見立てるという行為が非常に難しいです。
対象の特徴を端的に捉え、最小限の要素で構成する技術が必要になってきます。
折り紙での立体的な作品
次に立体的な作品についてご説明します
折り紙でいう立体的作品とは、
「様々な視点から鑑賞できる作品」を指します。
伝承作品に例えると「あやめ」がそれにあたります。「折鶴」のように見立てを強く意識した作品もありますが、先ほど説明した平面作品に比べると写実的な作品が多く見受けられます。
様々な視点から見られる事を想定した場合、どうしても写実的にせざるを得ないという理由もあるのかもしれません
伝承作品の例は作品の対象が元々シンプルな造形であるためか、然程複雑な作品ではないのですが作品の題材と作り手の発想次第で驚くほど精密な作品を作る事が出来ます。
余談ではありますが、昨今の創作折り紙界隈では複雑な立体作品が主流になっていると感じます。
立体的な作品の難しい点は、平面作品に比べると考えなくてはならない要素が多くなる事です。
先ほどの平面作品の例で挙げた「蝉」を立体的に作る事を考えてみます。
まず、斜め上や横から見られる事を考えると6本の足が必要です。体の厚みも表現したいですし、翅の生え方も気を付けたいです。
他にも目玉の位置や口吻(樹液を吸うストローような部位)の再現も考えられます。
上記の項目例を全て折り紙で表現する必要は勿論ないのですが、立体的に作品を作ろうとすると様々な事柄を思考する事になります。
では、実際に私が立体的に作ってみた「蝉」をご覧ください。
表現する箇所と省略する箇所
今回、蝉を作るに当たって表現をしなかった箇所が実はあります。
それは翅の数です。蝉を始めとした昆虫類は基本的に翅が4枚あるのですが、
私が作った蝉には翅が2枚しかありません。
蝉の後ろ翅は前翅の下に普段隠れており、飛ぶときぐらいしか見る事が出来ません。
私が今回製作した蝉は木や地面に止まっているイメージの蝉です。後ろ翅の再現を行う事も構造を変更すれば可能なのですが、後ろ翅を作る為に紙を使用すると他の部位に使用する紙が減ってしまいます。
隠れて見る事ができない後ろ翅の再現は行わずとも、蝉という作品は成立できると感じたので今回は省略する事にしました。
実は、立体的な伝承作品でご紹介した「あやめ」も実物のあやめとは異なる箇所があります。
本物のあやめは外側の大きな花びらが3枚。内側の小さな花びらも3枚あります。
折り紙のあやめは外側も内側の花びらも4枚づつです。
平面的な作品の項目でもご説明したような折り紙特有の「見立て」という表現を、あやめからも見て取る事が出来ます。
まとめ
表現する箇所と省略する箇所という考え方は紙器設計でも重要です。
あらゆる方向から什器を見ても美しい状態である事が理想であり設計士の常なる目標ですが、予算の関係や使用する紙のサイズによってはどうしても折り合いを付けなくてはならないシーンが多々あります。そういった際は店頭では見えずらい底面や背面にしわ寄せが行く事が多いです。
しかし「什器の背面にブランドロゴを入れたい」という要望がお客様からあった場合、背面にしわ寄せが行く事は決して許されません。
見えずらい箇所だから良いだろうという安易な考え方は、トラブルの元に繋がります。
設計士としての作り手目線と鑑賞者たるお客様の目線。
この二つを高い次元で融和させる事が、優れた紙器什器には求められます。