2021.06.15用語
【環境用語】これだけは知っておきたい!12選
はじめまして。企画開発部 開発チームの山本です。
5月にセールスプロモーション事業部より開発部へ配属になりました。
どうぞよろしくお願いいたします。
このコラムでは、商談の際にも今後飛び交う可能性の高い、環境に関わるワードをご紹介します。
「聞いたことがあるし、なんとなく雰囲気はわかるけれど・・・」といったワードの意味を明確にすることで、話の内容をより的確に理解し進めていくことができ、相手への信頼度が高まるきっかけにもなるかと思いますので、ご一読いただければと思います。
また、各ワードには関連する機関のリンクを貼っていますので、より深く理解したい!という方はそちらもチェックしてみてください。
■環境ワード①:SDGs(エス・ディー・ジーズ)
最近テレビでもよく取り上げられるようになってきた【SDGs】。最近の環境をテーマにした取り組みの活発化はこのワードが深い関わりを持っています。
【SDGs】とは、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、
「持続可能な開発目標(Sustainable DevelopmentGoals)」のことです。
(カタカナで言うと「サスティナブル デヴェロップメント ゴウルズ」となります)
簡単に言うと、「今を生きる世代だけでなく、将来を生きる世代にとっても継続的に平和で豊かな生活を送れるようにするための目標」という事になります。
【SDGs】は急に生まれた目標ではなく、国連サミットで2000年に採択された、2015年までに達成すべき8つの目標「MDGs」(=Millennium Development Goals=ミレニアム開発目標)
の後継として、2015年に採択されました。
「MDGs」が主に開発途上国を対象とされていた目標であるのに対し、【SDGs】は全ての国の人を対象にした目標です。大目標も8→17に増え、またそれを達成するためのターゲットが21項目→169項目と大幅にボリュームアップしています。
また、「MDGs」では「慈善活動」の考えにウェイトを置いていましたが、【SDGs】は「経済成長」や「ジェンダー」に至る広範囲な課題を網羅、豊かさを追求しながら環境を守り、「誰一人取り残さない」事を強調し、そのための社会基盤を2030年までに達成することを目標としており、企業の経営や活動にも密接に関わってくる取り組みとも言えます。
■環境ワード②:ESG
【ESG】とは、
環境(Environment/エンバイロメント)
社会(Social/ソーシャル)
統治(governance/ガバナンス)
の頭文字を取って作られた造語です。
投資家や金融機関の投資判断基準を変えるために国連が提唱し、企業が長期的に成長するための取り組みに必要な3つの要素として、近年重要視されています。
具体的には、
【環境:E】
・CO2排出量の削減
・再生可能エネルギーの使用
・生物多様性の確保
など
【社会:S】
・職場での人権対策
・ワーク・ライフ・バランスの確保
・地域社会への貢献
など
【統治:G】
・業績悪化に直結する不祥事の回避
・リスク管理のための情報開示や法令順守
・資本効率に対する意識の高さ
など
といった取り組みが、顧客や取引先、株主、従業員、地域等(=ステークホルダー)への配慮や企業の成長に欠かせないものと考えられています。
それにより最近では、売上高や利益を示す財務指標だけではなく、【ESG】に配慮した取り組みを行っている企業を高く評価し投資する【ESG投資】が、新しいベーシックとして全世界の市場で急拡大しており、企業にとってはもはや必須の取り組みとなりつつあります。
■環境ワード③:CSR
【CSR】は「corporate social responsibility(コーポレイト ソーシャル レスポンシビリティ)」の頭文字の略で、「企業の社会的責任」または「企業の社会対応力」と訳されています。
自らの利益だけを追求するのではなく、社会の一員として責任ある経営や活動を行う事でステークホルダーからの信頼を得るための取り組みを【CSR活動】と呼び、企業の多くは環境保護活動やボランティア、寄付等を活動に取り入れています。
先に取り上げた「ESG」の違いは、【CSR】は必ずしも収益を必要としていないという点です。
【CSR】にしっかり取り組んでいる企業は投資対象としても評価されるポイントではありますが、中長期的に企業の経営に好影響を与える必要がある「ESG」はよりビジネスに密着した考え方と言えます。
■環境ワード④:ダイバーシティ
【ダイバーシティ(Diversity)】は、直訳すると「多様性」。
1960年代からアメリカにおいて人種差別や女性差別の解消を目指し生まれた考え方で、1990年代にはマイノリティーや女性の積極的な採用、差別のない処遇を実現するための取り組みを企業の社会的責任として捉えるようになり、より発展したとされています。
企業としては、会社組織内において、年齢・性別・宗教・人種・趣味嗜好・価値観・ライフスタイルなどの違いを受け入れ、多彩な人材が持つ可能性を発揮させようとする考え方です。この考え方を推進し企業として成長していく取り組みを「ダイバーシティマネジメント」「ダイバーシティ経営」と呼ばれており、企業として社会的な責任を果たすために取り組む”べき”こととしてではなく、変化の激しいビジネス環境の中で企業が持続的に成長していくためには、あらゆる価値観をもって対応していくことが不可欠という考え方であり、【ダイバーシティ】を重視した経営戦略が今後 ますます企業の生存競争において必要となっていくことでしょう。
■環境ワード⑤:エシカル
【エシカル】とは英語で「倫理的な」という意味です。
最近ではSDGsに関連させて「人・地球環境・社会などに配慮した考え方や行動」という意味で使われることが多く、具体的には、
・社会の悪(児童労働や労働搾取、不法な動き)を助長せず、善(人道支援活動など)を促進する
・自然環境を損なわない
・地域社会や地域経済を応援する
などを指しています。
そうした地球環境や社会に配慮する観点から作られている製品やサービスを「エシカル商品」といい、また、エシカル商品を意識して選択し購入したりサービスを受ける事を「エシカル消費」と呼ばれています。
エシカル消費を行う上で判断基準になる主な項目は
・購入した金額の一部が社会貢献活動の資金になる
・フェアトレード製品
・農薬を使わないオーガニック食材や製品
・廃材を再利用した製品
・環境に配慮した製品
・再生可能エネルギー
・サプライチェーンにおいて人道的な犠牲の上に成り立っていない
などがあります。
そこで、消費者がエシカル商品を選択する上で判断材料になるのが「環境マーク」です。
エコマークやバイオマスマーク、FSC®認証マークなど、環境に配慮している事を示すマークがついている事で消費者がエシカル商品を選びやすくなるので、これまで以上に環境マークへの注目度が高まっていくと予想されます。
個人単位で【エシカル】な観点から購入する製品や受けるサービスを選択していくという動きは当然企業にも大きく影響するので、今後環境への配慮をテーマにした企業努力がますます求められます。
■環境ワード⑥:サプライチェーン
この用語は流通業界において既に広がっている用語で、直接環境ワードと結びつくものではありませんが、企業のSDGsへの取り組みなどに関連して頻繁に出てくる言葉として押さえておきたい用語です。
【サプライチェーン】とは、「商品の調達・製造から流通を経て消費者に届くまでのすべての工程」をひとつの連動したシステムとして捉えた考え方を示す言葉で、「供給連鎖」とも呼ばれています。
例えば、スーパーで買ったおにぎりは、原料の米を栽培する農家→農協などの集荷販売業者→おにぎりを作る製造会社→小売業者を経て消費者の手元に届きます。
(大手企業などは、お米の栽培からすべてを自社で生産しているという場合もあります)
こちらでは、【サプライチェーン】がなぜ環境ワードに関連するのかというところに注目したいと思います。
先ほど紹介したエシカル消費やSDGsの取り組みの中で、製品を作るうえで関わるすべての企業が地球環境や人道に配慮しているか、という事が注目され始めています。
最近では、「ユニクロ」製品の一部に中国 新疆ウイグル自治区の強制労働で生産された綿花が使用されているとし、アメリカ政府が輸入を差し止めているという報道や、「ナイキ」「H&M」が強制労働の問題から新疆ウイグル自治区産の綿花を使用しないと宣言し中国メディアから大きな批判を買うというニュースがありました。
これまで消費者には見えなかった【サプライチェーン】においても、こういった環境や人道に配慮した行動を責任感を持って取り組む動きが今後ますます活発になってくることが予想されます。
これは大手企業だけが持つ課題ではなく、【サプライチェーン】全体、つまりすべての企業が当然関わることになるので、どの企業にとっても重要な課題といえます。
また、今後、企業が環境配慮等への取り組みを証明するための様々な認証制度が注目されると予想されます。
自社の製品やサービスに対して認証を受けるために必要な準備は設備投資と同様、経営戦略において重要な項目になりそうです。
■環境ワード⑦:SDGsウォッシュ
「ウォッシュ」という言葉から、一見きれいなイメージを持たれるかもしれませんが、【SDGsウォッシュ】とは実態が伴っていないのに、さもSDGsに取り組んでいるかのようにごまかすような行動を指します。
1980年代、欧米の環境活動家を中心に実態を伴わない環境訴求をしている企業や事象を非難する言葉として、環境イメージのカラー「Green」と「うわべを取り繕う」という意味の英語「White Wash」を掛け合わせた造語「Green Wash(グリーンウォッシュ)」という言葉が使われるようになりました。【SGDsウォッシュ】はこの「グリーンウォッシュ」から連想された言葉です。
具体的に、どういった事が【SDGsウォッシュ】なのか、一例をあげると、
・SDGsを掲げた企業が、環境破壊を促進するような事業内容の企業と取引していた。
・SDGsへの取り組みをアピールしている企業のサプライチェーンが弱者に対して強制労働を行っていた
・SDGsへの取り組みを強調しておきながら、社内では長時間残業や雇用不平等が発生している
など、一言で言うと「SDGsに関する発信に実態が伴っていない」事を示します。
一度【SDGsウォッシュ】とみなされた企業はステークホルダーからの信頼性を大きく損います。場合によっては企業の存続が危ぶまれる程のダメージを受けるかもしれません。
再び信頼を取り戻すには相当な時間と努力が必要になります。
「見せかけのSDGs」にならないためには
・事実よりも誇張した表現をしない
・一部のみの環境配慮を大きく取り上げない
・事実と関係際の低いビジュアルを使用しない
などに注意し、実態に沿った表現をしていく必要があります。
また、これは企業の上層部のみならず全社員とも認識を共有することが必要なので
勉強会などを通して「SDGs」とセットで周知させることが大切です。
■環境ワード⑧:生分解性プラスチック
「生分解」とは、菌やバクテリア、その他の微生物の働きによって化合物が無機物まで分解される事です。
【生分解性プラスチック】とは、「生分解性があるプラスチック」であり、生分解性があれば、石油系原料でも【生分解性プラスチック】と言えます。
主な【生分解性プラスチック】をご紹介します。
・微生物産生系
ポリヒドロキシアルカノエート
バクテリアセルロース
など
・天然物系
セルロース
デンプン
キトサン
酢酸セルロース
など
・化学合成系
ポリ乳酸(PLA)
ポリブチレンサクシネート系(PBS、PBSA、等)
ポリカプロラクトン(PCL)
ポリビニルアルコール(PVA)
ポリグリコール酸
など
【生分解性プラスチック】のデメリットは、微生物がどれだけいるかによって完全に分解される速度に大きな差ができるところです。
例えば、土に埋めた場合と海に入れた場合とでは、微生物の量から分解される時間に大きな差が出てしまいます。土は土でも湿度が保たれた肥土なのか、微生物が少ない、または低温で乾燥した活動しづらい環境にある土なのかによっても変わります。また、海中は地中よりも生分解活動が活発でないといわれており、たとえ【生分解性のプラスチック】であっても、海中で完全分解されていない状態で海にすむ生き物たちが摂取してしまうと意味が無いどころか有害です。
近年問題になっている海洋ゴミやマイクロプラスチック問題を簡単に解決できる素材、というにはまだまだ課題が残りますが、現在では海水中の生分解が起こりやすい素材も研究開発が進んできていますので、引き続き注目すべき素材です。
■環境ワード⑨:バイオマスプラスチック
生分解性プラスチックの「分解されて自然にかえる」という定義に対して、【バイオマスプラスチック】は「生物由来の資源を原料にしたプラスチック」で、生分解性の有無は問われません。
現在ではトウモロコシやサトウキビ、お米やコーヒーの粉など、主に食品由来の【バイオマスプラスチック】が開発されています。
【バイオマスプラスチック】のメリットは、もともと自然界にあった素材を使用することで、焼却しても地球上のCO2の濃度を上昇させないという特徴があります。
デメリットとしては生分解性が無い素材が多いので、海洋ゴミになった場合マイクロプラスチックなど、環境破壊の要因になってしまします。適切に回収し焼却を行う事でカーボンオフセットすることが大切です。
最近では社会全体が環境への配慮に対する意識が高まってきていることもあり、プラスチックを扱う業界では従来使用してきたPVC(塩ビ)やPETなどの石油由来原料から「バイオプラスチック」に置き換えるための開発を進めている企業が増えています。
その際、原料コストが高いなどの理由から生分解性プラスチックよりも【バイオマスプラスチック】を採用する事が多いようです。
バイオマス成分を10%以上使用した製品を対象に「バイオマスマーク認定制度」があり、認定を受けた製品には「バイオマスマーク」が付与されます。
東具においても【バイオマスプラスチック】製品の開発に絶賛試行錯誤中です!
■環境ワード⑩:リデュース
「リサイクル」「リユース」と並び「3R」の一つである【リデュース】は、
「減らす・少なくする」という意味を持ち、「リサイクル」「リユース」よりも根本的な「そもそも不要物を発生させない」といった考え方になります。
個人単位では、
・買い物にエコバッグを持参し、レジ袋をもらわない
・不要な割り箸やおしぼりを断る
・詰め替え製品を使って容器の廃棄を減らす
・食べきれない量を頼まない
などの行動が【リデュース】にあたります。
また、企業としての【リデュース】になると
・包装の簡易化
・容器などの軽量化
・社内備品にリサイクル可能製品を採用する
・在庫管理を徹底し、劣化などによる不良在庫を削減する
・生産工程における廃棄物を再利用する
・適切なリサイクルルートを確立する
などがあげられます。
SDGsの理念には、【リデュース】をはじめ「3R」も必然的に深くかかわってきますので、企業が継続的に取り組んでいくために社内外での運用やシステムの構築が急がれます。
■環境ワード⑪:アップサイクル/ダウンサイクル
リサイクル・リユース・リデュースの「3R」とは違う新しい概念が【アップサイクル】と【ダウンサイクル】です。
【アップサイクル】は、使用を終えて価値がなくなった資源や製品を使い、より新しい価値に変換して価値を高めることです。
日本では昔から【アップサイクル】の考え方があり、シミがついた衣服の「染め直し」や割れたり欠けたりした陶器に施す「金継ぎ」が有名です。
近年では、
・海外の穀物袋を使って作られたデザイン性の高いバッグ
・廃タイヤを再利用して作ったビーチサンダル
・木くずを使った、デザイン性の高い木工製品
・ガラス瓶を再利用したインテリアランプ
など、“高いクリエイティブ力“をもって作られた【アップサイクル】製品が生まれています。
一方、【ダウンサイクル】は、元の製品の価値が損なわれる方向で資源再利用することです。
・古着を工業用雑巾にする
・回収したペットボトルを繊維化して車の内装生地にする
・再生紙のトイレットペーパー
などが【ダウンサイクル】製品と呼ばれます。
一見すると【ダウンサイクル】にマイナスなイメージを持ってしまうかもしれませんが、再利用する事に変わりはなく、ただ廃棄してしまうよりはるかに良い選択です。
しかしながら【ダウンサイクル】製品の多くは一度しかリサイクルできず、消耗すれば廃棄されてしまいます。
「廃棄物を出さない」努力をした上で、どうしても出てしまう廃棄物は、出来れば【アップサイクル】製品に、最低でも【ダウンサイクル】製品にできるよう、個人単位での意識を高めていくことが求められます。
■環境ワード⑫:フェアトレード
【フェアトレード】は直訳すると「公正・公平な貿易」です。先進国と開発途上国の貿易の間で、パワーバランスにより開発途上国の生産者が不利益な取引にならないよう、継続的に適正な価格で取引することで開発途上国の生産者の労働環境改善や貧困からの脱却、または乱開発による環境破壊の改善を目指す運動です。
【フェアトレード】にも認証制度があり、原料から製品になるまでのすべての工程において、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定めた基準を守られている製品に「国際フェアトレード認証ラベル」が付与されます。
主なフェアトレード製品は、コーヒー・カカオ・スパイス・テキスタイル・果物など、生活には欠かせないものばかり。エシカル消費とともにこの【フェアトレード】製品の注目度も高くなる事が予想されます。マークが無くても当たり前のように各国が【フェアトレード】でつながる世界になるのが理想的ですね。
いかがだったでしょうか。SDGsの動きが活発になりつつある昨今、新しい言葉が生まれたり既存の言葉に再び関心が高まってきています。
今回ご紹介した環境ワードを今後のビジネスに活用いただけると幸いです。